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殺意の集う夜

2010年05月06日 02:33

それらの六人については、殺したのはあたしだ。

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前回に続き、10年くらいあけての再読。面白いって分かってる本を読むのは、ストレスフリーで良いもんですね。懐かしさもあって、楽しい読書でした。

六人部(むとべ)万理は、友人の四月(わたぬき)園子に、なかば強引な手口で、山奥の別荘に連れて行かれることになる。二人は大学生。別荘の持ち主は、二人の大学の教師で一日宮(みのり)和徳という。この男は既婚者であるが、園子に猛烈に迫られている。そして、既に万理と不倫の関係にあったりする。

別荘についてみると先生がいないことが判明する。帰ろうとしてみるが、折悪く嵐の影響で帰り道が寸断されているという。別荘に泊まるしかないのか?なんて話していると、次々「嵐のせいで帰れなくて…」なんて人たちが別荘に集まってくる。何か、癖のありそうな人たちばかりがワラワラと。

万理はちょっとした勢いで、別荘にいる園子以外の全員を殺してしまう。不幸中の不幸…中の幸いと言うべきか、園子も何者かに殺されて死んでいる。「幸い」というのは「園子を殺した犯人に全ての罪をなすりつけてやれ」なんて考えから出た錯覚でしかないのだろうが、兎にも角にも、万理は園子殺しの犯人を推理することに。

さて、嵐で隔離された別荘で、本当は何が起こったのでしょうか?

物凄い展開です。勢いで六人の人を次々と殺していく下りは、ある意味、圧巻。
提示したいパズルのために、そのパズルが成り立つ状況を作る。それが、多少無理やりでもいいじゃないか、という開き直り。元々、異常な状況であるのだから、読み物として面白くあればいいじゃないか、そんな開き直り。
果てしなくシュール。それが、凄く良い。

しっかり、ふんだんに盛り込まれた技の数々が、次々と繰り出されてくるので、最後まで飽きない。お話のテイストが嫌いでさえなければ、おいしく頂けるんじゃないか?そう思う一冊。
★★★★★(星5つ)

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完全無欠の名探偵

2010年05月01日 05:07

ですからそれが山吹の特殊能力なのです、あの若者は話している相手の潜在意識を言語化させることができるのです

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この本を読むのは2度目だ。そもそも、西澤さんの本にはまるきっかけがこの本。一度目はもう10年以上前だったと思う。

最近、読書を何となく楽しめない。そういう体質になってしまったのか?と不安になり、過去に最高に楽しめた本を漁ってみることにした。その時、初めに思い出したのが、西澤さんの本たち。4冊ほど買って、一気読み。
大丈夫、僕が本を楽しめなくなった訳じゃない。オチが分かってるのに、この本たちは面白い。

山吹みはるという男が、主人公。とある事情で、大学の事務として働くことに。そこでいろんな人と話すことになる。大学の同僚、生徒、先生…

この「話す」というのが、この本では肝になる。みはると話している相手は、舌が滑るように喋りたい気分になってくる。「あれ?なんでこんなこと話してるんだろ?」「自分、こんなこと覚えてたんだ…」なんて思うようなことを気がついたら話している。

話しているうちに、ふと、自分がなぜそんなことを覚えているか、どこが引っ掛かっていたかに気づく。あの時、あの人は、もしかして、こんなことをやろうとしてたんじゃないか…。

みはるはただ相槌を打つだけ。自分は一切考えない。むしろ、相手の至った結論にも気づかない。

会う人会う人、今まで気づいていなかった疑問に答えを出し始める。すると、それが少しずつつながっていくのが、読者には分かる仕掛け。

一つ一つ、小粒ではありながら、それなりに楽しい推論が、積み重なっていく快感。仕掛けは、これだけじゃない。たとえば、みはるの話と交互に語られる、ある少女の話。この話が本筋にどう絡んでくるか…

これは、何度読んでも面白い。

ところで、西澤さんの本の中でこの本が特徴的に思える部分があった。不思議な能力に対して意味付けを行おうとしている点。意味付けといっても、ある種SF的な意味付けで、上記のみはるの能力が科学的に説明される訳ではない。でも、不思議な能力がありまして…ってだけでは終わらないのが、これまた意外と、悪くない。

あくまで、ミステリー的な部分に重きを置きつつ、周辺も楽しく飾る。良いのではないでしょうか?

★★★★★(星5つ)
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SOSの猿

2009年11月26日 01:41

「救急車、どこに行くの」と訊ねていた。
母は即答した。「どこかでね、誰かが、痛い痛い、って泣いているんだよ。だから、助けに行くんだよ」


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伊坂さんの新しそうな本、買っちゃいました。ちょっとずつ、ゆっくり読むつもりだったのに、なかなか上手くいかないもんです。

読売新聞に連載してたんですね。そういえば、一回見たような記憶があります。ちょこちょこ読むのは耐えられないな、と思ってみなかったフリをしたような記憶が。
五十嵐さんって人がこの本と対になる「SARU」って漫画を出すようなことも巻末に書いてありますね。

内容ですが、主人公の二郎が、SOSを求められるところから始まります。誰かが困っていたら、首を突っ込まずにいられない性格の二郎は、精一杯断ろうとするのですが、やっぱり、できる限りのことをすることになります。

知人の息子が引きこもりで…。そのSOSに取り組む二郎の「私の話」と交互に語られる「猿の話」。証券会社で起きた誤発注の原因を探る生真面目な男と、男が出会う奇妙な因果関係が語られます。

二つのお話に絡みつくように出てくる西遊記。いろんなところに現れては消える孫悟空がかき回すかき回す。何が本当で何が幻覚なのか?そもそも、そんなところに意味はあることか…?

やっぱり、心地よく読める。いろんな「惑い」を持ってくよくよするのが、ひどく良い。嘘正しいと思う。物語臭いまま、すっきりできる感じが潔くて、好きだな。

評価は★★★★★(星5つ)

…おっと、アマゾンにはまだレビューがないようですね。珍しい…。
というわけで、今日はここまで。


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