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新釈 走れメロス

2008年03月08日 22:10

芽野史郎は激怒した。必ずかの邪知暴虐の長官を凹ませねばならぬと決意した。


新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
森見 登美彦

祥伝社 2007-03-13
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この本が書店に並びだした頃、一度見かけて「酷い本だ」と思ったことがあった。
ロクに中身も見ずに。
そのときは、「走れメロス」の冒頭(上の引用)だけを軽く読んだ。
芽野史郎はメノシロウと読むらしい。
何か、胡散臭いでしょう?
さすがに買わんだろう、これじゃあ。

でも、近頃、森見さんの本を一冊読んでみた。
「夜は短し…」って本。
ちょっと幸せな気分になれる感じの馬鹿馬鹿しさがかなり気に入った。
・・・というわけで、この本にいたるわけです。

この本も馬鹿馬鹿しかった。
とても良い意味で。
この本の帯に本上まなみさんって人の言葉が載ってて

太宰さんに言いつけたい!


らしい。
ここまで言ってしまうのは恥ずかしいけど、太宰さんや他の短編の原作者がこの本の内容を知ったら面白いだろうな、とは思う。
意外と、このノリを許してくれなかったりして。

…下らない妄想はさておき。
短編一つ一つにコメントでも書いてみようか。

山月記
良いお話だった。
5つの短編の中で、僕が元の話の内容を知ってるのは、これと走れメロスだけ。
元のお話もやるせないが、少し僕らに近づいてきたこっちの山月記はもっとやるせない。
えぐられるような独白を残し去る姿は生々しくて…。
この主人公の位置まで堕ちていくのはとてもたやすいように思う。
傲慢で他人を見下しながら、はき違えた自信を持ち、その後挫折し、隠れ、そして消える。
ギリギリ踏ん張っている自分をちょっとだけ誉めてやろう。

藪の中
原作を知らない。
きっと知っていたらもっと楽しかっただろう。
自分の教養のなさが恨めしい。
それでも十分楽しめる出来だ。
たくさんの語り手の食い違うものの見方。
一つのお話が、語られる人によって微妙に違う。
みんなが自分を必死に説得しながら、自分のお話を作る。
読んでいるときは楽しいが、思い出すとやるせない。

走れメロス
ダントツで馬鹿馬鹿しかった。
太宰さんの胡散臭い友情をさらに胡散臭くして、走る芽野。
セリヌンティウス役は芹名。
彼を見てると、馬鹿であることのすばらしさが分かる。
下らないことのために人は命をかけなければならない。
元の走れメロスだって、そんなもんだろう。
だから走るし、だから待つんだ。

桜の森の満開の下
いい話だ。
満開の桜が怖いのも分からなくないし、何かをなくしてそれが何か気づけなくて、空しさを覚えるのもリアルだ。
少しずつ、少しずつ狂っていく。
何が狂っているのかも分からずに。
最愛の人が横にいるのに。
ホラーだな。

百物語
凄くグダグダしたお話だ。
引っ張って引っ張って、百物語には語り手は参加しない。
誰にも記憶されず、何かをつかもうと、目を血走らせた男。
たくさんの人たちの中で一人違うところにいて。
輪の中に入れずにいる語り手(森見)がいなかったはずの彼の唯一の目撃者。
ここにも一人、自分の道を行きすぎた人。


文学って、自分のコンプレックスを読者に叩き込むために書くんだろ?
そんなことを思った。
自分よりはるかに行き過ぎて、まともに生きていけなくなった人を描いて、楽しかったんだろうか?
文学って頭に悪いよねぇ。
思考が固まる。
だけど、面白い本であった。

評価は★★★★☆(星4つ)
早く内容を忘れたい気もしないでもない。
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