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青空の卵

2008年05月26日 18:30


そして振り返り、彼女の目を見てこう言った。

「出たくない。俺は、ひきこもりなんだよ」



青空の卵 (創元推理文庫)青空の卵 (創元推理文庫)
坂木 司

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なぜか、たまに何も考えずに本を買ってしまう時がある。
この本も、何を考えて買ったのか全く思い出せないから、何も考えずに買ったんだろう。
記憶に残らない行動をとるようになった僕は、もう終りが近いのかもしれない。

手に入れた経緯はこのようにすこぶる怪しいけれど、楽しめる内容だった。

帯には、

名探偵はひきこもり


と書いてある。
酷いキャッチコピーだとは思う。

ちょっと普通のひきこもりとはイメージの違う主人公の鳥井。
職業はプログラマー。
鳥井が唯一心を許しているのが、語り手の坂木。

母親は彼を捨てた。
父親は優しいが仕事の方が大事に見える。
祖母は愛ではなく憎しみを彼に教えた。
さらに浴びせかけられた、級友たちからの理不尽な暴力。

誰も彼を欲しがらなかった。僕以外は。

だから彼は自分から身をひくようになった。
どうせ必要とされないならと。
彼の部屋のドアを叩き続ける僕以外から。


ちょっといびつにも見える関係を形成している二人。

そんな彼らの周りで起こる様々な事件を、鳥井がサクサクと解決…って、何か、もの凄いありきたりですね。

この本では、事件は基本的にどうでもいいようだ。
たぶんテーマは人との関係。
人との関係に不自由な鳥井が、他人の人間関係を修復しながら、少しずつ少しずつ成長していく話を、坂木が、若干寂しさを覚えながらも、綴っている。
その一つずつの人間関係が、そして鳥井の成長が、お話のメイン。

時に非常にやりすぎだったり冗長だったりする記述が現れる。
イライラするような嘘くさい部分も。
素人臭がする、と言ってもいいかも。

でも、時々、心が動く。
きっと、僕が幸せに飢えているからなんだろうけど、まあ、楽しめてしまったものは仕方ない。

僕の評価は★★★☆☆(星3つ)

この本に関するレビューを書いている方がいました。
僕のよりも断然内容が濃いですよ。
『樽井さんの読書&電化よもやま日記』でのレビュー

お話が一部隠されていて、不思議な出来事に見える出来事がポツポツ観察され、名探偵がそれをあざやかにつないで見せる。
そんな形式のお話が流行っているのかもしれない。
僕が好きで、たまたまよく読んでいるだけなのかもしれないけど。
そういう本で特に気に入っている作家が西澤さんと北森さん。
ご興味のある方は、僕が楽しめた本を集めてみた以下の記事も参考にしてみてください。

ナイフが町に降ってくる
親不孝通りディテクティブ
屋上物語
メイン・ディッシュ
腕貫探偵

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わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

2008年05月24日 22:51

解釈は、記述との間で整合性がある限りにおいては自由ですが、整合性のないものは許されない


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文章を読むときに起こる「わかったつもり」を防ぐにはどうするべきか、ということについて書かれている。ざっくり言ってしまうと「本の読み方入門」って感じ。そして、良い入門書だと思う。

僕の中で、文章を正しく読むことはけっこう大きなテーマで、なかなか意識し続けるのは難しいのだけれど、一応努力はしている。そんな僕の頭に、この本の内容はすんなり入ってきたし、ためになった気もする。とにかく、面白く読めた。

昔、「本の読み方は自由だから」と言って憚らない友達がいた。今も友達だけど。これが、とんでもない読み方をする。最早、本の内容とか関係ないくらいの解釈。しかも、「読み方は自由」という、何だかイメージの良い言葉を振りかざすから扱いようがない。

小学校では「読み方は人それぞれ」と習う。たぶん、先生たちが理解していないから、子供が誤解するんだろうけど、正しくは「正しく解釈して、そこから何を考えようと自由」だよね?だって、好きに解釈するって「他人(=作者)の言ってることを無視」と同じじゃないかな?

この本は「正しく読もう(解釈しよう)。そして、その正しさを妨げるものが何か知っておこう」と言っている。感じがいいでしょ?
例文を使って、正しさを妨げるものが説明される。いかに人が浅い読み方をしているか。いかにイメージに流されて間違った解釈をしてしまうか。このパートが面白い。
上っ面を読んだだけでは、小学生の教科書すら正しく読めないことがあったり、勝手に持っている触りの良い知識を文章の解釈としてしまったり。

解決方法は「ミスポイントをよく理解して注意すること」だって。ここがもう少し身につけやすいものであったら、完璧だったのにな、と思う。難しいんだろうけど、もっと、僕みたいな怠け者でも実践できる訓練法とかないんですかね…
ぎぶみー、コツ的なもの。

そういえば、この本でははじめの方から、やたら小学校の国語の教科書が例文に選ばれている。
「小学校での国語教育は微妙だ」ってことを言いたいんだろうな、と思って読んでたら、案の定。最後の方に出てくる。
僕も常々問題だと思ってたんだよね、的な知ったかぶりをしてみたり。

真面目な話、「読み方は自由」って教えるのってやっぱり無責任すぎると思う。

僕の評価は★★★★☆(星4つ)

「文章の書き方」に関する本は前に記事にしていて、こっちもかなりお気に入りなんで、興味のある方は、参考にしてみてください。
理科系の作文技術
…日本人って国語を教えるのが下手なんだろうね。
[わかったつもり 読解力がつかない本当の原因]の続きを読む

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夏への扉

2008年05月11日 14:14

 綿毛の化物のような仔猫時代から、ピートはきわめて単純明快な哲学を編みだしていた。住居と食と天気の世話はぼく任せ、それ以外の一切は自分持ちという哲学である。だがその中でも、天気は特にぼくの責任だった。コネチカットの冬が素晴らしいのは、もっぱらクリスマス・カードの絵の中だけだ。その冬が来るとピートは、きまって、まず自分用のドアを試み、ドアの外に白色の不愉快きわまる代物を見つけると、(馬鹿ではなかったので)もう外へは出ようとせず、人間用のドアをあけてみせろと、ぼくにうるさくまつわりつく。
 彼は、その人間用のドアの、少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起こす都度、ぼくが十一カ所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。そして一つ失望の重なるごとに、彼はぼくの天気管理の不手際さに咽喉を鳴らすのだった。



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大量に期間をあけて更新。
この間に読んだ本の中で一番面白いものをとりあえず書いてみようかと。

古いSF小説。
SF小説なんて古くなったら終わりなんじゃないかと思ってた。
現実が小説の中の年代を追い越し、現実は何か知らないが、やっぱり現実っぽいのだ、ってことになる。
ネタだって、尽きてくる。
「夏への扉」もコールドスリープとタイムトラベルなんていう使い古されたネタだった。

でも、何か人気があるようで。
読んでみたら、ページを繰るのが楽しくなる面白さだった。
SFの設定そのものじゃなくて、ストーリーでもっていく方法が良かった。

主人公はとある技術者。
マネジメントができる友人(マイルズ)と一緒に会社を興し、途中で雇った秘書(ベル)を恋人にした。
忙しくありながらも、人気商品を作ったりなんかして、なかなか幸せにやってた。
飼いネコ(ピート)もやたらとかわいいし。
が、ある時突然、その友人と恋人にだまされ、仕事を奪われ、コールドスリープに押し込まれる。
目覚めたら30年後。

ピートはどうしたんだろう?
憎むべきマイルズとベルはどこで何をやっている?

そして、巷にあふれるまるで自分が設計したかのようなロボットたち。
自分はこれから何をするべきか。
投資会社に預けていた株は、投資会社の倒産でなくなっていた。
一人頼りにできる姪を探して捜索を続けるも、行き詰まり。

さてさて…。

いや、面白かった。
文章の記述も翻訳家が頑張ったのだろう、読みやすい。
やりすぎのきらいがあるユーモアも、僕にはすんなり受け入れられた。

僕の評価は★★★★☆(星4つ)

ちょっと僕の記事でイメージが持ちにくかった方は他の人の書いたもっと秀逸な記事をご覧になると良いかと…
夏への扉 - SA・N・PO♪

ちなみに、この本は気になってブックマークしていたもの。
誰かが強く推薦しているものって、やっぱり悪くない。
オススメの本の探し方だったりする。

そういえば、SFな設定を使っているのに、むしろストーリーでもっていく、というやり方は僕が好きな西澤保彦さんの本に似てるかも。
気になったら以下も参考にして下さい。

関連記事
西澤保彦さんの本に関する僕の記事
七回死んだ男
[夏への扉]の続きを読む

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