「その流域の人々の生活への愛情なくして開発は意味をもたない」本当にいい本だった。
広く深い知識と広い人脈を元に語られる話はどれも印象的だった。
端々に表れる力強い言葉たちにも強く心を打たれた。
文章への気遣いも並々ならぬものがあり、高橋先生のこの問題に対する真摯な態度に、好感を超え、尊敬の念でいっぱいである。
その内容であるが、題名の通り地球の水の歴史・現状からその危機的状況を語り、その解決へ向けての提言がなされている。
現状の把握に関してはさまざまな例が適切に選び出されたデータを通して語られる。
バランスを間違えれば煩雑になるかもしれないくらいの大量の情報が、驚くほどすっきり提示されている。
その危機的状況は「中学で習ったような有名な川の全てで問題が起こっているのではないか?」と思えるほど。
「二〇世紀には、石油争奪が原因で戦争が勃発したが、来る二十一世紀には水獲得問題が原因で戦争が発生する可能性が高い」(一九九五年、世界銀行イスマエル・セラゲルディン副総裁)という言葉が現実的に思えた。
これらの状況に対して日本人はきわめて無関心であることも語られている。
それは日本には国際河川がないことも要因として挙げられているが、実は日本人にとって世界の水問題は深いかかわりがある。
その一つの理由として、日本が、牛肉・野菜などの輸入を通して、その育成・栽培にかかる水(仮想水・バーチャルウォーター)を大量に消費している国であることが挙げられている。
そして、これからの河川開発のあり方、それへの日本の関わり方へ話が移っていく。
河川開発の現時点での到達点を踏まえ、河川開発のあり方、そしてその心構えについて語られる。
この時点では既に、高橋先生の提言について疑問をさしはさむこともできないくらい、この本にメロメロだった。
また、世界の水問題でこれから焦点となっていくであろうモンスーン・アジアの中の日本、この地域で唯一先進国である日本、水問題をどこよりも早く短期間の間に体験し対応してきた日本、について語られ、日本の責務の大きさが示される。
そして、この本で特に僕が気にっているのは、しばしば現れる過去、そして現在の研究者たちの取り組みを高橋先生が語る部分である。
愛情いっぱいに語られている。
世界の技術者の情熱もさることながら、日本の技術って本当に凄いんだな、と改めて思った。
『明治の先人たちの高い心意気』という節から最初の一文がとても印象に残っているので引用しておく。
治水事業に限らず、多種のインフラストラクチャーの整備をきわめて短期間の明治・大正から昭和初期に、近代技術を習得し、日本国土に展開し得たのは、世界技術史の奇跡とさえ評価されている。いや、何か断片的なレビューになってしまったが、本当に内容が濃いんで…
僕の力及ばずでした。
でも、評価は★★★★★(星5つ)
お腹いっぱい。
アマゾンでの評価
はこんな感じ。
この記事を書いた時点で3つのレビュー。
最初の人のレビューは僕のこのレビューより秀逸だな、と思いました。
他の二つはきっと微妙ですが。
以上です。