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科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる

2010年03月15日 01:16

科学というものは世界を理解しようという試みだ。そして実際に、世界を理解できる試みのように私には思える。しかし、その科学という試みじたい、世界の中で生じている。つまり、われわれがいきている世界は、世界を理解しようという/理解できる試みを中に含んでいるわけだ。別にそんな世界である必要はなかったのに、なぜかそうなっている。

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哲学はけっこう好きだ。とりわけ科学哲学は、すっきりさせてくれそうな、視野を広げてくれそうな、そんな期待を抱かせてくれる。だから、科学哲学の本を買うことに対して、比較的財布の紐は緩い。

でも、今回はなかなかに辛い読書で。

内容には、ところどころ惹かれるんですよ。著者が擁護したいという科学的実在論という立場も好感が持てる。
「科学はこの世界に起こる現象を理解できる。そして、少しずつ理解してきている」
他の哲学哲学した理論よりは、問題の難しいところに真正面から取り組んでいるように見えるのが良い。

でも…

一言で言うと、集中できない読書だった。関係のない、面白くもない、むしろ恥ずかしい会話形式が、苦痛だった。体調も悪かったかもしれないが、そんなところや、あんなところが気になって、内容が追えない。

そして、すっきりできなかった。もちろん、はじめから書かれているように、難しいところを突いているというのは分かるのだけど、結局、各議論の中で「どうやったら問題から一番上手く逃げれるか」という話になってる気がしてしょうがない。
それなら、科学的実在論の価値は何なんだろう?

ある理論に対する無駄な肩入れが入るせいで、読み物として、バランスを欠いていないか?

モヤモヤして、もう駄目だ。話をまとめられそうにない。ちょっと、上手くまとまっている書評を紹介。

世界を丸ごと理解するために「科学哲学の冒険」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
そもそも、この書評を読んで購入した。この本の一番正しい読み方が、書いてあると思う。本の読み方が上手い人が読むと、それだけで本の価値が変わる。

科学哲学の冒険
ちょっと専門的なレベルで著者の議論を評価している。「一部無理がある」という評価であるが、僕にはさっぱり。

Chase Your Dream ! » 科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる
こちらも読書を楽しめた例。文章も楽しめたとのこと。強く主張するが、楽しめた人の方が、正しいと思う。

この読書が失敗したのは、きっと体調と、僕の読み方が下手なせいだ。そして、会話形式は好みの問題だ。
しかし、本を読み、何かを書くのが、ここまで辛かったのは、はじめてかもしれない。
そういう意味で、記憶に残る読書かも。

★★☆☆☆(星2つ)

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矢上教授の午後

2009年08月31日 06:15

「むろん、この状況を歓迎しているわけではないのだが。だがね、一度こんな場面に行きあってみたいと思っておったのは確かだろうな」
「というと?」
「ずばり、閉ざされた空間での犯罪」


矢上教授の午後矢上教授の午後

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本屋をふらふらしながら、タイトルに惹かれて買った本。可もなく不可もなく…よりは少し満足できなかったかな。

大学の中にある老朽化した建物。普段人気の少ないその場所に、微妙な秘密を抱えた学生・助手・教授なんかが集まっている。そこに、雷雨で停電。エレベータが動かなくなり、ちょっとややこしい形の非常階段・非常扉のせいで、結果的に建物が封鎖される。そこで、殺人事件が。

ベタと言っても良い展開。ベタなのも嫌いではないので、ここに何か新しさがあったり、キャラクターが特殊だったり、文章が上手かったり、という特徴があれば良い。しかし、全ての点で弱い。

不自然な印象が残る。

登場人物が多く、会話主体の文章。しかし、個々の人物に特徴がないため読みにくく、また会話が多いのに説明口調ばかりで軽快さがない。上に引用した「というと?」みたいに、会話を成り立たすための、「とりあえずの相槌」が多いのも良くない。一度だけ、主人公の矢上教授が「○○じゃ」なんて口調で喋るけど、どんなキャラづけがしたいのさ?

細かく章を分けて視点が変わる。そこで、登場人物が後ろ暗いことを、こそこそと。しかし、登場人物の区別が難しいため、もうどこの誰の話なんだか。

お話の伏線も頭に残りにくい。ただただ、見せ方が汚いのが原因。たくさんの小さな謎を散りばめる手法はけっこう好きだけど、書く力がある人が取るべき手法だと思う。

一番不味いのは、随所で必然性が無視されること。なぜか取られない合理的な行動は、おそらく筆者の想定不足。読者は、必要のないところで解放されることのないストレスを溜めるだろう。たとえば、「最後までオチを語らない探偵」というベタな設定のせいで起こる、展開。何か切羽詰まって見せるから頂けない。

思いついたトリックに適切なお話を選べなかったのかな?

僕の評価は★★☆☆☆(星2つ)
けなし過ぎたな、と反省しつつも、妥当な評価かなと思うけど…。
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クリムゾン・ルーム

2008年09月08日 02:42

目覚めたとき、男は狭い部屋の中で、小さなベッドに横たわっていた。
彼を取り巻く壁と天井は、深紅だった。



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クリムゾン・ルームって脱出ゲームがある。
僕も昔やったことがあった。
Wikipediaで脱出ゲームを調べると、説明の中に現れる。
そんなに有名なゲームとは知らなかったな。
脱出ゲーム - Wikipedia
どうやら、そのゲームの作者が、同ゲームをモチーフに本を書いた様子。

主人公は著者と同じ名前の高木。
高木はゲームはクリエイタだが、純粋な創作に関わらなくなって久しい。
そんな折、『K』という男に出会う。
高木に憧れる才能のある若者。
彼の作品を高木の名前で出し始める二人。
そんな彼らの周りで起こる事件と、クリムゾン・ルームというゲームのお話。

ハードボイルドな雰囲気で進んでいくお話で、先が気になるお話。
ただ、ハードボイルドな雰囲気は過剰で、おっさんが自分を主人公にしたてて作ったお話だ、とか思うと萎える。
ニヤリと笑ってるつもりで、外から見てたらニタニタ、みたいな。
たぶん、ハードボイルドの勘違いだと思っている。

お話はどこに見せ場があるのか分からない感じ。
伏線があまり絡み合っているように見えない辺り、実はよくできたお話ではないんだろう。
実際、何の話だったか?なぜクリムゾン・ルームってお話なのか?オチは?という質問の答えがことごとく弱い。

でも、見せかけだけで、何となく先を気にさせる辺りは上手いと言えるのかも。
決してリピーターがつくものではないとは思うけども。
せめてもっと短ければ、とも思う。

あ、ちなみに48章あるうちの9章までは読めるようです。
サンマーク出版:クリムゾン・ルーム:著者:高木敏光

評価は★★☆☆☆(星2つ)

ゲームの方はこの本よりきっと面白い。
ゲームバランスがよくて、意地悪すぎもしない。
たぶん長くても30分程度でクリアできるんじゃないかな。
気になる方は是非チャレンジしてみてください。
FASCO-CS > CRIMSON ROOM
(音がなるので注意)

今回は訳あって、届いた時の写真をアップしないといけないようなので…。(理由は続きから)

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